第2回 相手の本音を引き出す話の聴き方

お客様と第一線で話をするコミュニケーター。日々の対応でお客様の生の声を拾い上げてくれる大切な存在だ。スキルをつけてもらったら長く勤めてもらいたいし、良いサービスをお客様に提供するためにも、従業員の業務内容や職場環境、人間関係などに対する満足度をあげることもコンタクトセンター運営者にとって重要な仕事だ。その最も参考となる情報である、コミュニケーターの本音を聞きだすためにはどうしたらよいのかを考えてみよう。


話を“きく”とは?

「ヒアリングするよ」――コミュニケーター時代から21年。何度この言葉を聞き口にしたことだろう。コンタクトセンター業界では耳慣れたこの「ヒアリング」という言葉を英語での表記は“hearing”。“きく”という意味の英単語には、“hear”の他に“listen”と“ask”がある。しかし、面談の時には「“hearing”をする」と言うので、私はいつも違和感を覚える。

 

“ききかた”の違い

 

何故か。まず、それぞれの単語の意味を捉えてみよう。辞書で引くと、以下のように訳される。

●hear=(…が)聞こえる、(…を)聞く

●listen=(意識して)聴く、聴こうとする

●ask=尋ねる、質問する

それぞれの単語の意味の違いは“ききかた”の違いである。日本語において、“ききかた”を表す漢字は主に3つあり、それぞれ“聞く”、“聴く”、“訊く”と書く。図-1は漢字を分解したものだ。

●“聞く”は、門の中に耳があり、戸が開くことで自然に音が届くという“ききかた”で、そこに意識はない。

●“聴く”は、“耳+目心”となり、「聴こう」という意識を働かせる“ききかた”である。

●“訊く”は、言葉が矢継ぎ早に飛び出し、相手からの回答を強制する“ききかた”だ。

 

 “hear”の“ききかた”は、「なんとなく音が聞こえてくる」という状況だ。ヒアリング時に、このような話の“ききかた”をする上司に本音を話そうとは到底思えないだろう。さらには、コミュニケーターが話してくれた重要な情報を聞き逃してしまいかねない。また、責め立てるように質問しても、相手は警戒し、心にフタをしてしまう。

 

一方、自分のことをまるでわが身のように共感してしっかりと聴いてくれる人には信頼感が生まれる。嬉しいし、もっと話したいと感じる。つまり“聴く”という“ききかた”のみ、相手の本音を引き出すことができるのである。

傾聴の姿勢を伝え本音を引き出そう

“聴く”の前に“傾く”という漢字をつけると“傾聴”という言葉になる。英語では“listen to”と表現する。前置詞の“to”は、方向や、執着・固守など強い意思を表す。

傾聴とは、カール・ロジャースが提唱した、カウンセリングにおける“ききかた”である。相手の方向を向き、傾き寄り添い、しっかりと共感しながら話を聴くのだ。この傾聴の姿勢を伝えることがヒアリングでは最も大切だ。

 

傾聴の姿勢を表す3つの極意がある。①あいづち、②復唱、③質問である。図ー②はそれぞれのポイントをまとめた表だ。

 

●相づち…単調にならないようにする。例えば「はい」という相づちだけでは、いい加減な印象を与える。さまざまなバリエーションの言葉を遣い、気持ちをこめて言うことで、しっかりと受けとめていることが相手に伝わる。また、タイミングにも気をつける。言葉の終わりに重ねて打つと威圧的に感じさせ、間が空き過ぎると不安感を与える。餅つきを思い浮かべてみよう。臼と杵で餅をつくときに、杵を下ろすタイミングが早ければ、返しの手とぶつかり怪我をさせてしまう。餅を返してから杵を下ろす時間が長ければ、餅はつきあがらない。相づちは、杵を下ろすタイミングをイメージして打つと良い。相手の最後の言葉を確認したらテンポ良く打つ。心地良く対話をし、終話というゴールに一緒に向かおう。

 

●復唱…クレーム対応においても、復唱は重要なスキルである。特に、気持ちや状況を繰り返すと、相手との距離が縮まる。例えば、怒り心頭で不満をぶつけ攻撃してくる相手がいたとする。「怒り」は二次感情と言われ、その前段階として何らかの一次感情が存在する。皆さんもご経験があるだろう。例えば、急いでいるのに電車が遅れて間に合わなくてイライラ、楽しみにしていた商品が届いたら壊れていて腹が立った、手違いがあって今日必要な商品が届かなくて店に文句を言う、など様々なシーンで怒りを感じたときに、自分はなぜ怒っているのかを捉えなおしてみる。

・「困っている」から「怒る」

・「ガッカリした」から「怒る」

・「希望を叶えて欲しい」から「怒る」

など、必ずベースとなる一次感情があるのだ。そこを拾い「お困りですね」「それはガッカリされますよね」「本日どうしてもご入り用だったのですね。」と相手が復唱してくれたらどうだろう。気持ちをわかってくれる人だと信頼し、次々と本音を語りたくなる。

 

●質問…質問は不明点を明らかにし互いの認識相違を防ぐとともに、相手に興味があるということを伝える。ある北陸の温泉宿に宿泊した際の話だ。宿に着くと、仲居が部屋まで案内をしてくれた。「どこからいらしたんです?」「今日はどこか見てきたんですか?」「明日はどんなご予定ですか?」など、世間話がてら質問をする仲居が多いが、彼女からは全く質問されなかった。彼女は、淡々とお茶を入れ、食事と風呂の時間の説明をし立ち去った。用は足りたが、私はとても寂しい気持ちになった。心から気にかけ、関心を持ってくれる人にマイナスの感情は抱かないはずだ。

また、ヒアリングをする際には、以下の事も心がけたい。

 

●座る位置…斜め45度が威圧感を与えない。

 

●身振り手振り…相手のしぐさを真似ると親近感が増す。また、お礼やお詫びや相づちを言う際に、頭を動かす。体でも感情を表現し伝えるとよい。

 

●声のトーンとスピード…ポジティブな話題には明るい声で、ネガティブな話題にはトーンを下げる。また、スピードも相手に合わせる。

コミュニケーターもお客様と同じ人間

お読みいただき、「お客様向けの聴き方研修と同じだ」と感じる方も多いだろう。おっしゃるとおり、コミュニケーションのベースは、相手が誰であろうと、対面・非対面も関係なく共通している。コミュニケーターに「お客様の話をしっかり聴きましょう」と指示をしておきながら、私たちが彼・彼女らの話を傾聴できていなければ示しがつかない。

 

図ー③は有名な山本五十六の名言だが、人材育成において肝に銘じたい。コミュニケーターの本音を知り、一緒に職場を改善する。その初めの一歩が傾聴することである。そして、彼・彼女らの満足がお客様満足に直結するということを忘れず、しっかりとフォローアップしていきたい。